中国一の「金持ち村」とも呼ばれた村が、日本円で8兆円もの負債を抱え、財政破綻しました。背景にいったい何があるのか、現場を取材しました。
記者
「こちらの高台からは、村の全体を一望できます。あそこに見えるのが、村のシンボルともいえるビルです」
中国東部・江蘇省にある華西村。「中国一の金持ち村」と呼ばれていました。
目をひくのは、ヨーロッパ風の豪華な一軒家が並ぶ住宅街と、中心部にそびえる地上72階建てのビル。ホテルとして使われているこの建物には、1トンもの金を使って作られた牛の像まで展示されていました。
かつて貧しい農村だった華西村が、なぜ「金持ち村」になったのか。
村の男性
「村の指導者たちが彼に敬意を表すためにここに来ます。これが呉仁宝さんです」
1978年に始まった中国の「改革開放」路線のもと、当時の村のトップ・呉仁宝氏は強力なリーダーシップで、「集団経済」という特殊なシステムを導入。村民の給与の80%を村営企業が吸収し、株や新たな事業への投資に活かして鉄鋼業などを急速発展させました。
2010年には年間の売り上げが6000億円にものぼったといいます。
しかし先月、ある異変が…。
「華西村は破産だ。とっくの前から破産しはじめていたのだよ」
なんと、財政破綻したのです。
ここまでさびれてしまった理由について、村の男性は。
村の男性
「幹部は全部トップが認めた人たちばかり。トップの言うことは絶対。もし指示に従わなければ、工場長でも明日は普通の従業員になってしまう。これが華西村の特徴だね」
トップだった呉氏のやり方は村を発展させた一方、人々の自由な起業活動を制限したり、過剰な投資に反対しづらい環境を生んだりするなど弊害も多かったといいます。
2013年に呉氏が亡くなって以降、息子が村営企業の経営を引き継ぎますが、新たな産業を育てることはできず、負債は8兆円にまで膨張。先月、村営企業はたった1元、日本円にしておよそ20円で投資会社に売却されました。
夜、広場に集まった村民に未来をどう考えているのか聞きましたが。
「私は話したくないです」
改革開放の成功モデルとまで言われた村の破綻。地方政府の財政悪化が深刻になっている中国で、今後、第二の華西村が生まれる可能性もあります。
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