コロナ禍で、一時は廃業や休業が相次いだ築地。しかし今、外国人観光客も戻り、かつてないほどのにぎわいを見せています。なぜ、築地の人気が再燃したのか3つの理由を追跡しました。
■「店名をのりにプリント」客を呼び寄せるキッカケに
築地の人気が再燃したワケの1つ目は、外国人の心を捉える“ちょっとした工夫”です。
連日行列が絶えないこのお店は、ウニの専門店です。新鮮なウニを贅沢に使った海鮮丼の数々を頂けます。
タイから:「ステキ」
アメリカから:「ありがとう」
お客さんのおよそ8割が外国人だとか。
タイから:「フレッシュ」
一番人気は、豪華な「うに食べ比べ丼」。北海道や宮城など、5種類のウニを敷き詰めました。お値段なんと時価。この日は9600円でした。
アメリカから:「住んでいるアメリカに比べれば安いわ」
タイから:「タイではもっと高いです。ここは良心的な値段よ」
皆さんはどうやって、このお店を見つけたのでしょうか?
タイから:「タイで有名な俳優が、ここに来ていたのをYouTubeで見て来たんです」
今や誰もが写真や動画をインターネット上に載せる時代です。そこで、このお店ではこんな工夫をしました。
うに虎 小椋浩店長:「名前を知っていただいて、来てもらおうかなと。(店名を)のりにプリントした」
これなら料理の写真だけ載せたとしても、しっかりお店をアピールできるというワケです。
ちょっとした工夫が、築地にお客さんを呼び寄せるキッカケになっているのです。
■「玉子焼き」をスナック感覚で…お手軽グルメ増
アメリカから:「歩いていたら、人が集まっていたので、買おうと思ったんだ」
大正13年に創業した老舗玉子焼き専門店。このお店も、ちょっとした工夫でお客さんの足を止めることに成功しました。
せいろでキューブ状の玉子焼きを蒸して売り出したんです。焼いた玉子焼きを一度冷まし、再び温めると、だしの風味が豊かになるのだとか。
長年、その場でも楽しめる玉子サンドなどを売ってきましたが、さらに工夫を!
つきぢ松露 齋藤賢一郎社長:「店頭のライブ感、それを演出したくて」
玉子焼きをスナック感覚で食べるアイデアも外国人にウケています。
ドイツから:「食べるのが簡単だし、シェアもできるからいいわ」「ベリーグッド」
築地では店頭で手軽に食べられるグルメが、コロナ禍前より増えています。活気が戻ってきたのは、こんなところも関係しているのかもしれません。
■“日本ならではの深い味”を求め築地に
築地の人気が再燃したワケ。2つ目は、外国人の求めるモノが変化したということです。
大正3年創業のつくだ煮店。ある商品の人気が、急速に高まっているといいます。
アメリカから:「すごくいいね」「すごくいい、好きな味です」
試食していたのは、「柚子胡椒(ゆずこしょう)」です。
実は今、柚子胡椒はアメリカで今年流行るであろう調味料として紹介されるほど注目されているのです。
アメリカから:「アメリカにはない味なので、とても気に入っています。柚子はなかなか手に入りません。これでマリネを作ろうかな」
最近は、日本ならではのより深い味を求めて、築地に来る外国人が増えているといいます。
江戸一 飯田一雅社長:「築地に来る理由が、面白いものを発見できるっていう。市場の本来の魅力を味わいに来ているんじゃないかな」
突然、店員さんが取材班の通訳に相談をしました。
つくだ煮店スタッフ:「“混ぜるご飯”を分かりやすくしたい」
「混ぜご飯の素」を的確に伝える英文が思いつかず、困っていたといいます。早速、通訳が考えた案をプリントアウト。
通訳:「大丈夫だと思います」
「炊いたご飯に混ぜるだけ」というポップを設置すると、早速、インドネシアの家族が興味を持ったみたいです。そして、「混ぜご飯の素」を購入しました。
インドネシアから:「ここに分かりやすく書いてあったので購入しました。帰国したら家族みんなで食べます」
さらに、中国の女性も購入していきます。
つくだ煮店スタッフ:「皆さんのおかげで売れました。ありがとうございます。皆さんのおかげです」
■SNSの力で世界へ「世界一の玉子サンドと聞いて」
こちらは地元で愛されているサンドイッチ店。突然、外国人のお客さんが増え、戸惑っていました。
築地気まぐれ屋 店主 松原雄二郎さん:「ホームページも持ってない。宣伝は全然。地元の人たちに食材をと(始めた)」
築地で働く人たちに向けたサンドイッチが、世界に知れ渡ったのもSNSの力。
アメリカから:「“世界一の玉子サンド”だと聞いていたんだけど、本当だったよ。とてもおいしいね」
■興味を持つ外国人多い“BENTO文化”
築地の人気再燃で、場外市場から少し離れた弁当店にも外国人の姿がありました。
台湾から:「昔ながらの雰囲気で、ここなら日本ならではの料理が食べられると思ったんです」
中国から:「この近くのホテルに泊まっていて、おいしそうだったので購入しました」
日本ならではの“BENTO”という文化に興味を持つ外国人は多いのです。
家族で切り盛りしているこのお店。リピーターが続出するサービスがあります。
購入客:「わがまま聞いてくれる。こういうの作ってよとかね」
できるだけお客さんの要望に応えようとする姿勢は、外国人にも同じです。
築地ほわいと 澤尾喜美子さん(71):「『Can you speak English?』って入ってきたから、2人で『No』って言ったの。そしたら『Eggカシャカシャ』ってやってるから『スクランブルエッグ?』って言ったら『Yes』と。『Wait a minute』って言って作った」
もしかしたら、こんな優しいエピソードもSNSで広がっているかもしれません。
喜美子さん:「私も今から英語習おうかな」
息子・正喜さん:「しゃべれるようになったころには死んでるよ」
喜美子さん:「『サラバじゃ』って」
■飲食店業界 他店との差別化を意識した試み増加
築地の人気が再燃したワケは、外国人だけではありません。飲食店のニーズも変化しています。
昭和4年に創業した精肉店。これまで取り引きがなかった飲食店から、不思議な注文があったといいます。
近江屋牛肉店 寺出昌弘社長:「さぬきうどん店から、『ローストビーフを作ってください』という話が来た。何で、さぬきうどんがローストビーフ?と思った」
ローストビーフを注文したのは、東京・浜松町にあるうどん店。リーズナブルな価格で、本格讃岐うどんが楽しめるお店です。
ローストビーフを使った究極のうどんを作りました。香川県のブランド和牛「オリーブ牛」を贅沢に盛り付けた至極の一杯。お値段3300円。
もり家 東京店 濱雄大店長:「客単価アップだけではなくて、一番はお店でしか食べられないメニューを召し上がっていただくこと」
飲食店業界では、他店との差別化を強く意識した試みが増えているといいます。
濱店長:「当店のメニュー開発をお願いしている人のご紹介。すごくこだわりの強いプロフェッショナルな人。『近江屋』にすれば間違いないと、今回お願いしました」
「築地にはいい食材を扱うプロがいる」。再認識した飲食店の人たちが足を運び、築地の活況に拍車を掛けているのです。
寺出社長:「(築地が)再ブレイクしている理由は、本物が残っているから。本物を売り続けている頑固さが価値として皆さんに分かってもらって、これだけの集客になっているのかなと思います」
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