27日に西日本各地では梅雨明けとなり、本格的な夏がすぐそばに迫っている。そんななか、全国各地の学校では水泳の授業が次々に廃止されている。その理由を取材した。
■生徒は賛否両論「寂しい」「プール自体が嫌」
静岡県沼津市にある17校の中学校すべてで、水泳授業が今年度から廃止された。
沼津市第五中学校 体育教師
渡邉雄司さん
「こちらがプールです。使ってないので汚れ放題です」
水泳の授業が廃止される理由の一つが、プールの老朽化だ。
「こういうひび割れなんか、基本的に子どもたちは裸足で歩くのでリスクがあります」
しかし、プールを改築するには、およそ2億円もかかるという。さらに、授業廃止には別の理由も…。
「水温が30℃ぐらいまでいっちゃう。もうお風呂ですね。気温と水温と両方高くなりすぎると(プールの)活動ができなくなってしまいます」
近年、猛暑が続き水泳の授業が中止になるケースも増えている。さらに、水中では汗をかいていることに気づきにくく、知らぬ間に熱中症にかかっている生徒も多いという。
また、生徒を“水の事故”から守る教師の精神的なプレッシャーも大きい。
「30人くらいの規模でやってしまうと、どうしても目から離れてしまう子たちがでてしまうので、万が一そっちのほうで事故があったりすると、ちょっと怖いなっていうところが思ったりします」
教師の負担や、老朽化、熱中症対策などを考慮し、沼津市では今年度から中学校での水泳授業を廃止した。
沼津市第五中学校 生徒
「(Q.水泳の授業がなくなることについて、どう思う?)夏の暑い日とかに、冷たい水に入るのが気持ちよくて、そういうところが好きでした」
「皆で競争したり、皆で追いかけあったり、水中鬼ごっことかが楽しかった。夏の風物詩といった授業がなくなるのは寂しいです」
一方、こんな意見もあった。
「プール自体が嫌って感じです。水泳が苦手なので、授業廃止されて良かったなっていう気分が強いです」
保護者はどう思っているのか?
中学2年生の親
「プールあったらイエイ!って楽しみにしているので。スイミングとか習ってなかったので、プールで泳ぐっていうと、やっぱり学校の授業だけだったんで、授業でやってくれたらいいな」
小学生の親
「水の事故も毎年報道とかで知りますので、泳ぐ力や水の怖さを知るためにも、プールの授業は必要だと考えています。先生に正しい泳ぎ方を教えてもらって、義務教育でやってほしいって考えています」
■水泳授業が普及した背景
水泳の授業が日本で普及した背景には、悲しい事故があった。
1955年に2つの水難事故が発生した。5月、旧国鉄の連絡船・紫雲丸が別の連絡船と衝突し沈没。この事故で、修学旅行中だった小中学生100人が犠牲となった。
さらに7月には、三重県で女子中学生たちが海上で水泳訓練をしていた際に溺れ、36人が亡くなる事故が起きている。
これらの痛ましい事故を受けて、小中学校の学習指導要領には学校のプール設置と水泳授業の実施が明記されることとなった。
現在の水泳授業についても、学習指導要領には「水泳の授業は中学2年まで必修」と定められている。ただし、適切な水泳場の確保が困難な場合には、水泳の授業を実技で取り上げなくてもよいとも記されている。
最近では、施設の老朽化や指導教員の負担、熱中症への警戒など、学校側の負担が大きく、水泳授業を廃止する動きが広がっている。
すべての中学校で水泳の授業を廃止した沼津市では、小学校も2022年から一部の学校で水泳授業を廃止し、現在では市内にある14校が民間業者に委託しているという。
■着衣水泳のポイントは?
これからの時期増える水の事故だが、いざという時どう対応したらいいのか。こちらも取材した。
東京・葛飾区にある「JSSスイミングスクール立石」では、区の水泳連盟と連携し、年に1回着衣水泳の体験会を行っている。
JSSスイミングスクール立石 インストラクター
友井謙集さん
「泳げるから大丈夫ではなく、水難事故っていうのは別物ですので。実際に着衣でプールの中に入っていただいて、体験していただいて、どれくらい難しいのか。それを知って備えるってことが重要となります」
小学校で水泳を習い、泳ぎに自信があるという駒見直音アナウンサーが実際に体験させてもらった。
駒見アナ
「上がるのにも一苦労ですね。うわぁー重たい。洋服がまとわりつきます。これ普段の倍以上の負荷がかかりますね」
友井さん
「倍以上ですね」
では、実際に水難事故に遭った場合、どうしたら良いのか?
「もし岸にたどり着けない、近くにない場合は、浮いて待つ」
重要なポイントは「浮いて待つ」こと。水難時はパニックになりやすく、暴れてしまうと体力が奪われ、沈みやすくなってしまう。水面に顔を出し浮くことで、呼吸を確保し、冷静さも保つことができるという。
「まず大の字で浮いて、その際にあごをちょっと上げて、気道を確保していただいて、胸を張って、リラックスした状態で浮いて待つのがポイント」
実際に体験した駒見アナは?
「海水パンツだけで泳ぐのとやっぱり全然違って、何よりも重たさをすごく感じました。教えてもらった通り、大の字で浮くと楽になれたので、ためになるなと思いました。絶対やったほうがいいと思います」
友井さん
「(Q.これから夏本番で水難事故も増えてくると思いますが?)楽しい夏休みなんですけど、毎年やはり水難事故の悲しいニュースが多くなってきていますので、それを1件でも減らしていきたいということで、私共は着衣水泳を広めていきたいと思ってます」
■水難者を発見したらどうする?
溺れている人を発見した場合、私たちはどのように行動すればいいのか。JSSスイミングスクール立石の友井さんは、このように説明した。
「一緒に溺れてしまう恐れがあるので、水中に入り、助けに行くのはやめた方がいい」
「周りにあるペットボトルやクーラーボックス、流木など、浮き輪代わりになるものを投げてあげるのが良い」
(「ワイド!スクランブル サタデー」2025年6月28日放送分より)
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