7月20日からオーストラリアとニュージーランドで共同開催されている女子サッカーのワールドカップ。毎日熱戦が繰り広げられていますが、強豪国・ドイツが1次リーグで敗退、先日は優勝候補だったアメリカも決勝トーナメントで敗れるなど、波乱続きの展開となっています。最近ではインターネット技術の進歩に伴い、こうした海外で開催されている試合も日本にいながらにしてリアルタイムで観戦できるようになりましたが、ブックメーカーでベットしながら楽しむファンも増えていると言われています。
我らが『なでしこジャパン』の活躍をはじめ、予想外の大躍進を見せたモロッコなど、これまでの試合成績を振り返るとともに各国のサッカーレベルを見ていきましょう。
女王の記録的敗退
今大会でも第一優勝候補として目されていたアメリカ。オリンピックでは史上最多の4回の金メダルに輝き、女子ワールドカップでも史上最多である4回の優勝を経験し、FIFAランキングにおいては長く1位の地位を守り、『女子サッカーの女王』とまで称されているなど、実力・人気共に兼ねそなえた最強国です。今大会でも史上初となる大会3連覇を狙っていましたが、先日6日のスウェーデンとの対戦で、PK戦の末、まさかの決勝トーナメント敗退となりました。敗因としては、ヴラトコ・アンドノフスキ監督の戦略ミス、主要選手にけがが相次いだこと、ベテラン選手に頼り過ぎたことなどが指摘されていますが、実はワールドカップでアメリカが3位以内に入れなかったのは、これが初めてのこと。これほどまでに早く、アメリカがワールドカップの舞台から姿を消したのは記録的悪成績とも言えるのかもしれません。
なでしこ達の大活躍
2011年大会では、サッカー界の女王・アメリカを下して初優勝に輝いた日本チーム『なでしこジャパン』。その後はFIFAランキング11位にとどまっていますが、主要メンバーの世代交代をはじめ、各選手の強化を行うなど切磋琢磨を繰り返し、才能ある選手を取り揃えて3大会ぶり2度目の優勝をめざして今大会に挑んでいます。グループステージでは優勝候補国だったスペインにも圧勝するなど白星を重ね、グループ首位で決勝トーナメントに進出。先日行われた決勝トーナメントの1回戦では強豪国であるノルウェーを3-1で下し、二大会ぶりにベスト8に名を連ねることとなりました。「今大会で最も団結しているチーム」と絶賛されているように、3人のFWと2人ウイングバックという実質5人のアタッカー達により繰り広げられる巧妙で連携の取れたプレイスタイルが日本の強さを特徴づけています。
大躍進の初出場国
今大会では、これまでサッカー弱小国と思われていたチームが強豪国を下すというゲーム展開が幾度か見られましたが、その中でも最も注目されたのが北アフリカの国・モロッコではないでしょうか。モロッコといえば、2022年に開催された男子サッカーのワールドカップで初めてベスト8入りを果たすなど、近年、急速に実力をつけてきているチームという印象がありますが、今回、女子サッカーにおいても同じことが言える活躍ぶりを見せています。ワールドカップ初出場ながら、グループリーグでは日本と並ぶアジアの強豪国・韓国を1-0で破って初勝利を上げると、その後の対コロンビア戦にも勝利し、初出場にして決勝トーナメント進出、ベスト16に名を連ねるという快挙を果たしました。また、こうした試合結果とは別に、対韓国戦ではモロッコのDFヌハイラ・ベンジナ選手がヒジャブ(イスラム教の教えに従って頭髪を覆うスカーフ)を着用してプレーし、ワールドカップに新たな歴史を刻みました。宗教的な理由から選手が頭部に被り物を着用することは長らく禁止されていましたが、2014年に国際サッカー連盟(FIFA)が承認、そして今大会で初めてヒジャブを着用した選手が活躍したことで、これまで参加が難しかったイスラム教圏の女子サッカー選手の可能性を切り拓く大きな第一歩となったのではないかと言われています。
女王・アメリカが決勝リーグ一回戦で敗退、ドイツをはじめとした強豪国も早々に姿を消した反面、モロッコをはじめとしたチームが活躍を見せている今大会。世界的に見ても女子サッカーの人気は急上昇しており、プレイヤー人口だけでなく観戦者数も急速に増えてきていると言われています。